脳を活性化させて記憶力をアップ
記憶法について
刺激をあたえつづけ、脳を活性化することが大切
「・・・・・・最近もの覚えが悪くなった」と感じている中高年は少なくないだろう。モーニング娘。やAKB48のメンバー全員の名前はもはや覚えようとは思わないが、取引先の担当者の名前をド忘れしてしまうのは、ちょっとまずい。トラブルに発展しかねないからだ。
「そのうち自分のキャッシュカードの暗証番号まで思い出せなくなるかもしれない」という不安がよぎり、筆者は先日、記憶術の本を求めて書店へ足を運んだ。
記憶術の本を選ぶ前に、記憶とは脳のひとつの機能だから、大好きな脳科学の本にも目を通しておこうと考え、数冊を手にとってパラパラとページをめくった。
「脳の特別な病気でない限り、記憶力が急に低下することはありません」と、作家で医学博士の米山公啓氏は記していた。また「脳トレ」で名高い、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏は「脳は使えば使うほどよく働く」と活脳法を説いていた。
忙しくて確定申告することを忘れていた、かの茂木健一郎氏ですら、自著で「記憶をつかさどる海馬は急に機能低下しない」と語っている。どうやら茂木氏は、税金を支払う段階で急に「源泉徴収」という制度が日本にあることを忘れていただけだったようだ。
それはさておき、ほとんどの識者が「急に記憶力が低下することはない」と断言していることは興味深い。
その根拠となるデータをある本に見つけた。神経病理学者のシェファーが1972年に実施した、痴呆のない高齢者の脳と20代の若者の脳を比較した「加齢による神経細胞の減少」と題する実験のデータだ。
それによると、言葉の意味や概念の記憶である「意味記憶」と、自分の経験をともなう「エピソード記憶」をつかさどる海馬の神経細胞の減少は、前頭葉の神経細胞の減少とくらべてそれほど顕著になってはなかったという。つまり、老年になると前頭葉の機能は衰えるが、海馬の極端な機能低下は見られないということだ。日常生活で頭を使いつづけることで、記憶の機能は維持される、とシェファー強調している。だから前述した識者のコメントは間違っていなかったということだ。
じつは「最近もの覚えが悪くなった」と感じるのは、特定の神経回路を使わなくなっているだけのこと。記憶が消えてなくなってしまったのではなく、とり出しにくくなっているだけなのだそうだ。
たとえるなら、記憶をひっぱりだす“チェーン”が隠れているだけ。それはひいては、「興味をもって覚えたい」と思う対象が少なくなっていたり、周囲の状況に応じて自分を変えられないようになっていたりすることのあらわれだという。
なるほど説得力にあふれている。たとえば、「最近記憶力が減退している」と考えて、刺激を求めて書店に向かうこと自体が、脳を活性化していることにつながるともいえよう。
さらに、このように数冊の本の内容を覚えて帰宅し、テキストに書いているわけだが、この「書く」という行為も、誰にでもできる記憶術といえなくもない。
立ち読みした記憶術の本に「書店で立ち読みして、その内容を帰宅するまで覚えると記憶力は鍛えられる」とは書いてなかったが、勝手に覚えて持ち帰るのはタダだ。
必要な箇所や要点だけ覚えておく。そして短期記憶が消えないうちに、つまり忘れないうちにメモしておく。まさにこれぞ「私の記憶術」といえるのではないだろうか。決して胸を張れるものではないが。